「…………」
突っ伏していたケイスケが顔を僅かに浮かせて、目だけで白シャツを見ていた。
膝を曲げて、足をモジモジと動かしている。
こいつら……本当に最低だな。
というより、そういう目で見られている対象が、世界が違えども俺だという事実が気持ち悪い。
変態2人に構わず話を進める。
「で?」
「…なにが?」
「“なにが”じゃないだろ。何しにきたんだよ。俺たちに用があるんじゃないのか?」
俺の冷ややかな視線を気にも止めず、白シャツは涼しげに笑う。
認めたくないが、目の前のこいつは間違いなく俺だと思う。
シキの言うことを信じるなら、違う世界の俺。
一体その世界で俺に何があったのかは知らないが、わざわざ次元を超えてきたのならそれなりの理由があるはずだ。
いや、あってもらわないと困る。
「あーあ。ジュース飲んだらオシッコしたくなっちゃった~」
「…トイレに行けばいいだろ」
「でも~、面倒くさいな」
白シャツがチラリとシキを見た。
「フ…ならば俺が代わりに行ってやろう」
シキがすっくと立ち上がる。
「意味ないだろそれ!」
瞬時にツッコんだが、なぜか誇らしげな表情を見せると、きびすを返し颯爽とトイレへ向かった。
…完全に馬鹿だ。
その様子を見届けてから、白シャツは俺に向き直る。
「んふ。かわいいでしょ」
どうやらトイレに行きたいというのは嘘だったらしい。
あのシキを自在に操るとは…こいつ、ただ者じゃないな。