「別の世界ってどういう意味だよ」
シキの言っている言葉の意味がさっぱり分からなかった。
「フッ。腑抜けが。わからないなら教えてやろう。エンディングという概念を知っているか?」
俺が小さく首を振ると、「雑魚にも分かるように教えてやる」となぜか勝ち誇った表情で口の端を吊り上げた。
そこからシキがあれこれと意味不明な話を長々語り出したが、やっぱり意味不明だった。
しかし現に今、俺とは別の「アキラ」という人間がこの場に存在していることだけは確かだ。
ということはシキの言う「別の世界」という言葉はあながちとんちんかんというわけではないんだろう。
ここにシキがいる時点ですでにおかしい状況なんだが。
「別の世界」の俺…。
渦中の“そいつ”はカルピスのグラスを両手で持つと、ストローをちゅうちゅうと吸い始める。
「ん…んく……ん」
かなり勢いよく飲んでいるせいか、口元から白い液体がつう、と流れた。
「ふふ…相変わらずエロいな…」
シキが鼻血を出しながら恍惚な表情で白シャツを見ていた。
薄ら気味悪い笑顔を浮かべている。
……シキってこんなやつだったか……?