時々思う。
俺は何のために生きているのか。
安らかな寝顔を見せる幼なじみ。
その穏やかな表情の裏側には癒せない傷と罪がある。
それはどんなことをしても消えるものではない。
死ぬまで向かい合っていかなければならない問題だ。
それでも笑顔でいられるのは誰のおかげでもない。
あいつ自身の強さだ。
それ以外の何物でもないことは、俺が一番よく理解しているつもりだ。
「アキラがいるから」
だったら、何故そんなことを?
そんな風に思ってもいないことを簡単に口にしないでほしい。
それとも俺に気を遣っているつもりなのだろうか。
俺を求めるのはどうして?
俺を抱くのは何のため?
性的な欲求を満たすため。
幼い頃の劣等感を晴らすため。
それとも力こそ全てだと、俺に教え込むつもりか。
心の隙間を埋めているのは、むしろ俺だ。
抱かれることで、自分を必要とされていると思い込みたい。
さしずめそんなところだ。
俺はに何もない。
辛い過去も、劣等感も、寂しさも、何かを強く求めることも。
俺は強くなんてない。
強いのはあいつだ。
結局、俺は何一つとしてあいつのためにできることはないんだから。
隣で眠る幼なじみの、警戒心を微塵も見せない姿に、とてつもなく惨めな気持ちになった。
「アキラ…」
不意に呼ばれた名前に我に返る。
「眠れないの?」
「いや…悪い。起こしたか?」
「大丈夫だよ」
そう言って俺を抱きしめた。
無性に泣きたくなった。