「ジュリオ、おっかえりー♪」
「――っ、ジャン、さん……!?」
その日、うちの幹部筆頭の前髪と胃袋を執拗に攻撃していた陰湿なエネミーが突然姿を消した。
とはいってもドン・オルトラーニの悩みの種はひとつではないので、結果としては彼の前髪も胃袋も完全に救われたというわけではなく、多少負担が軽減されたくらいなのかも知れない。
ともあれ、今までどんな情報網にもひっかかることなく、俺たちの目から逃れていた面倒なGDの巣のひとつ、こいつが今朝、潰れたって情報が飛び込んできた。
ベルナルドは興奮気味にまくし立てる。
「ジャン!ジュリオがやってくれたぞ!」
「んあ?ジュリオがどうしたって?」
「俺がいくら網を張っても見つからなかったGDのアジトだよ」
「ああ、最近郊外でいろいろ面倒を起こしてるヤツら?」
「ああ!そいつらの巣を、ジュリオが潰してくれたんだ!」
そんなわけで、我が愛しのマッドドッグにご褒美をと俺はこんな格好をしてみた。
「メイド服。かわいいだろ?」
ベッドにセクシーポーズで横たわり、スカートからチラリと太ももをのぞかせてみる。
「ど、ど、どうしたんです、か……?」
「お前がサ、すっげー活躍したっつーからそのご褒美だよ♪」
「……活躍?」
「GDのアジト、やったんだって?ベルナルドがご機嫌でさ~」
「あぁ……はい……たまたま、です」
あ……あれ?
なんか、あんま喜んでない……?
まー、そりゃそーだわな……。
だって俺オトコだもんな。
「悪ィ……こんなん嬉しくねーよな」
「あ……いえ、その……」
「いやさ、ジュリオが頑張ったからさ、今日は何でもお前にご奉仕しちゃうぜってつもりでこんな格好したんだけど……ちっと方向性違ったか」
大の男がメイド服着て「ご奉仕よん」ってそりゃなんの罰ゲームだよって話だな。
「ジャンさん、には……そんな格好似合わない、です……」
「……だよなー」
我ながら発想がアホ過ぎた。
「ジャンさんは、ご奉仕なんてしなくて、いい……」
「ジュリオ?」
「そ、それ……俺が、着ます……!」
「え」
軋むベッドの不規則な音。
それに合わせて、小さな喘ぎ声が断続して響く。
「あ、ん、ジャン、さ、ん……」
「ジュ、リオ……」
メイド服のジュリオ……すっげえ可愛いんだけど……。
そんじょそこらの女なんかより全然メイド服を着こなしてる。
だらしなく開いた口がなんか色っぽいし。
ヤバい。めちゃくちゃ興奮する。
でも。
なんで……。
なんで俺がメイドさんに犯されてるんだ?
普通逆じゃね?
メイドさんはご主人様犯したりしなくね?
「ジャン、さんっ、気持ちいい、ですか……?」
「あっ、……っ、ジュリオ……!」
ジュリオの動きが早まる。
余裕のない表情。
トロントした目をして熱っぽい声をだしやがる。
くそ、エロい顔……。
「ジャンさん、に、ご奉仕するのは、俺、です」
「ジュリオ……」
俺はジュリオの背中に手を回して、ゆっくりとさすってやった。
「あ、ジャンっ……お、俺……もう……」
「ジャン、さん」
「んー。なあに?」
ぐったりとベッドに転がって、まったりピロートーク。
実はこの時間がけっこう好きな俺。
「ありがとう、ございました……その……」
「あん?なにが?」
「ご褒美……嬉しかった、です」
「そーお?つかこれはご褒美になったのか?」
「はいっ」
「そか」
当初の計画とは大幅にズレたけども、ま、なんか喜んでるみたいだし、結果オーライってことで……。
俺は幸せそうなジュリオの顔にキスをした。
end