今日、アレが出た。
あああ、もう口に出すのもはばかられる。
黒くて艶やかで疾風のごとく素早いアレよ。
しかもヤツは、あろうことか、俺の、CR:5のボスの部屋に出やがった。
俺が悲鳴をあげると、真っ先にジュリオが駆けつけた。
「ジャン!!」
「ジュリオ~(>_<)」
俺は待ってましたとばかりにジュリオにしがみつく。
「かくかくしかじかなんだよジュリオ頼む!」
「わかりました。俺に、任せてください」
す、と目を細め、ジュリオがナイフを構えた。
しかし敵もそう簡単じゃない。
ヤツは、あのマッドドッグジュリオのナイフよりも素早かったのだ。
俊敏な動きで、逆にジュリオが翻弄されていた。
「こりゃお見事」
「……っ、す、すみません、ジャンさん……」
壁には数十本のナイフが、美しいラインを描いて突き刺さっていた。
だがそこにヤツの姿はない。
ジュリオは今にも死にそうな顔で俯いている。
……それにしても一体どこにそんなナイフを隠し持ってたんだよ……。
次にルキーノが来てくれた。
「どうした、ジャン!?今の悲鳴は!」
「るきーのぉ(>_<)」
「うお!?なんだその壁のナイフは!?まさかGDのやつらが!?」
「あ、いや……それは……」
俺は事情を説明し、ヤツの始末をルキーノに託した。
「はぁああ!?××××(自主規制)だぁ!?」
そんなもんで騒ぐんじゃねぇと、ルキーノは呆れ顔で俺を見た。
「しかももういないじゃないか。どっかへ逃げたんだろ。ほっとけ」
「やだ~。やだやだ!またいつ出るかわかんないじゃんかよう!」
「あっ、ジャンさんそこです!」
「ひえぇっ」
とっさにルキーノによじ登る。
「こら、俺は木じゃねぇぞ」
そう言って懐から銃を取り出した。
ま、まさかルキーノ……?
「フン。こんなもんはなぁ……」
「……………」
「……………」
「……………」
部屋の壁にはいくつものゴリッパな風穴が……。
しかもヤツに弾をくらわすどころか見失ってしまった。
「す、すまんジャン…数打ちゃ当たると思ったんだが」
「あーのなぁ……」
「下手くそ」
「ジャン!今の銃声は何だ!何があった!?」
扉が開き、ベルナルドが飛び込んできた。
「ベルナルドー(>_<)」
「な…!?この部屋は一体!?まさかGD!?」
真っ青な顔でベルナルドが部屋の壁を凝視してる。
そりゃそうだ。
一見すると、激しい襲撃に遭ったかのような有り様だもんな。
「ぅんにゃ、コレはそのう……」
「……ふむ。なんだ、そんなことか。よし、任せろ」
事情を聞いた我らが幹部筆頭は自信に満ち溢れた表情を見せた。
さっすが、年長者は違うぜ。
「大体なぁ、ジャン。お前が部屋を散らかしてるから、出るんだよ」
「うー……」
やっぱ菓子の食べこぼしとかが原因なんかしらん……?
「執務室での飲食は禁止だな」
「そんな……」
ベルナルドはにやりと笑うと、小さな缶を取り出した。
「バル●ンだ。これはな、害虫を駆除する成分が入ってる。××××なんて一発で……」
得意げに話すベルナルドの後ろで何かが動く。
「あっ……」
「ベルナルド!後ろだ!」
「え」
「うわぁぁ……!!!」
「と、と……」
「飛んだーーーーー!!!」
逆襲だ!
Gの逆襲だ!
駆除されまいとあっちも必死か!
最終奥義出しやがった!!
これまさに命のやりとり!!
「うわーっ、うわーっ!」
足がもつれてしりもちをついた。
「ジャンさんっ!俺の後ろに!」
「で、デカい…!」
「は、早く、バ●サン……!」
「こっちに来るぞ……!」
その時、デカい声とともに扉が勢いよく開いた。
「おう、ジャンいるか?……って何やってんだおめーら?」
部屋の隅にかたまった俺たち4人を不思議そうに見やると、イヴァンはずかずかと大股で部屋に入ってきた。
「もうメシ食ったか?うめーホットドッグ屋見つけてよお、おめーの分も買って来たから……あ、××××」
ばんっっっ
「!!?」
え!
イヴァン、今、素手で……え、ええ!?
「おい、ティッシュ……って、だからなんなんだよ、おめーらはさっきから……」
かくも激しい生と死のせめぎ合いは幕を下ろした。
その後、念のため●ルサンを焚き、掃除屋に部屋中を消毒してもらった。
イヴァンはエンガチョなのでしばらくは部屋に立ち入り禁止とした。
あんにゃろ、まさか素手で……ぶるる。
end