キーンコーン
定時を知らせる鐘が工場内に響いた。
「よーし、あがっていいぞ!」
工場長のよく通る声が聞こえてきた。
よかった!
今日は早く帰れそうだ。
当日分の作業の前倒しをしたおかげで、ほとんど仕事が片づいている。
あとは仕上げをするだけだ。
「今日はイブだからな。みんなも早く帰りてぇんじゃないかと思ってな。ちっとキツかったかもしれんが、昨日までにほとんど終わるように作業工程のスケジュール組んだんだよ」
ガハハと工場長が笑った。
粋だなぁ…。
「ケイスケもこき使って悪かったな!もうあがれ!」
「え…でも仕上げが…」
「そんなもん俺がやっとくさ。今日は早く帰って、アキラとゆっくりしろよ」
「は、はいっ」
ほっと胸をなでおろした。
クリスマス、大丈夫そうだ。
アキラのクリスマスプレゼント買うの、今日がラストチャンスだもんな。
あれこれと思案していると、勢いよく事務所の扉が開いた。
「工場長!大変です!!」
「どうした?」
「20~22日までに発注した部品に不良が見つかったらしく、全て回収になったと業者から連絡が!」
「なんだとぉ!?じゃあ明日受け渡しになってる製品はどうするんだ!?」
「代わりに業者が新しい部品を持ってくると…」
「てことは解体して、また初めからってことか!?」
「おそらくは…」
「バカやろう!!明日までだぞ!」
わわ。大変なことになったぞ。
非常事態だ…。
部品の組み替えなんて今からじゃとても明日の納品に間に合わない。
「あーっ、ごちゃごちゃ言っても仕方ねぇ!やるしかねぇな!」
工場長が工具箱を取り出して、作業の準備を始める。
工場長、やる気なんだ。
そりゃそうだよな。
できるできないじゃなくて、やらなきゃいけないんだもんな。
「工場長、俺も手伝いますっ」
工場長は驚いた顔で俺を見た。
「ケイスケ…いいのか…?」
「はい、大丈夫です」
「だけどお前…」
「いいんです。早くやっちゃいましょう!」
「ケイスケ、すまん!!」
工場長が深々と頭を下げた。
まだ工場内に残っている作業員を集めて、大量の部品組み替えの作業が進められた。
アキラはすでに仕事が終わって帰ってしまっていたけど、電話して事情を話したらすぐに駆けつけてくれた。
「おう!アキラ、すまんな…」
「いえ」
今日はおそらく徹夜の作業になるな…。
明日はとうとうクリスマス本番!!
どうするどうなる俺!?