「俺、アキラの赤ちゃんが産みたい」
ブファーーーッッ!!
ケイスケのとんでもない発言に飲んでいたお茶を思いっきり吹き出した。
もちろんその全ては俺の真正面にいるケイスケが浴びたわけだが、ケイスケは全く気にする様子はなく、真剣な面持ちでこちらを見ている。
「何言ってるんだ、お前……」
もう何から突っ込んでいいかわからないほど問題だらけのケイスケの言葉。
いやすでにケイスケ自体が問題だらけだこの場合。
「俺、真剣だから」
あーあ。
ついにケイスケがおかしくなった。
こないだ熱出して40℃近くまで上がったから、多分それが原因だ。
よく考えればケイスケは昔からおかしかった。
だけどあまりにも自然体でおかしなやつだったから、普通にスルーしていた。
だけどここへきてようやく気づいた。
友達になったのは失敗だった。
「アキラ?」
「そもそもお前男だろ」
「うん」
「そしてもちろん俺も男だ」
「うん」
「それからお前挿れる側だろ」
「うん」
「てゆーかお前男だろ!」
「うん」
ダメだダメだ!
こんな根本的な話しが通じるなら子供が欲しいなんて言わないだろ!
「さすがに子供は産めないだろ…」
「だよねー(´∀`)」
うわー……。
あっさり認めたし。
なんだこいつ。
意味がわからない。
「いや、俺たちって男同士だから、この先、その…ずっと2人なわけでしょ?」
ようやくタオルで降りかかったお茶を拭きながらケイスケがまた話し出す。
「まあな」
「でね、俺思ったんだ。もし俺が死んだらアキラはひとりになる」
なるほどな。
ケイスケが心配してるのはそういうことか。
そこで子供がいれば寂しくないだろうし、自分が老いた時に頼ることだってできるからな。
だけど……
「そんなこと……」
ケイスケはいつもひとりで勝手に悩む。
どうでもいいことはすぐに俺に聞くくせに、本当に大切なことや、問題点や不安なことは全部自分で背負い込もうとする。
「そんなことはお前が心配することじゃないだろ」
「アキラ……?」
こういうところがイライラするって言ってるんだ。
わからないやつめ。
「明日、いやこのあとすぐ俺が死ぬかもしれない。そしたらお前はひとりだ」
「え」
「そしたらお前は養子でももらって育てて、将来面倒見てもらうのか?」
「そ、それは…」
「そういうことじゃないだろ?」
ケイスケは俯く。
そもそもこんなことを悩むなんてナンセンスだ。
男らしいのか女々しいのかわからん。
アキラを守るだの、大切にするだの言っときながら肝心なとこ逃げ腰でどうするんだ。
「俺たちは男だから子供は産めない。そんなことはハナから承知の上で一緒にいるんじゃないのか」
「うん……」
「人間なんていずれは絶対死ぬだろ。そんなことは俺だってわかってる。俺がお前と一緒に生きてくのを決めた時点でどっちかが死んだらどっちかがひとりで生きていかなきゃいけないのもコミコミなんだよ」
そうじゃなきゃおかしいだろ。
わかってるうえで、こういう関係なんだろ。
バカ……。
だけど、ひとりになって平気だってわけじゃない。
「要はお前が先に死ぬとかじゃなくて、死ぬまで俺のそばにいればいいだけの話だろ?」
「…!!はいっ!」
end