珍しくルキーノは酔っていた。
普段は水のように飲む酒も、今夜はルキーノを特別気持ちよくしていた。
だがそれも仕方ない。
どうやらルキーノは仕事で“いいこと”があったらしいのだ。
最近ぐっと寒くなったデイバンの夜。
男2人が並んで歩く。
まったく寒い話だ。
もちろん、少し離れた場所から護衛が3人ついてきている。
ますます寒いぜ。
「はっはっは!ジャン!今日は何て良い日だ!」
「ったくもー、足元フラついてんじゃねーか、飲み過ぎなんだよ」
自分よりはるかに大きな男の脇に潜り込んで必死に支える。
ったく、どっちがどっちを支えてんだかわけがわからない。
「今日は気分が良い!」
そういうとルキーノは脇でよろめく俺を勢いよく抱き寄せ、噛みつくようなキスをした。
「んっ、る、キーノ…くるし、って!」
「ジャン、今夜は寝かさないぜ」
今夜「も」だろ……
くそ、絶倫ヤロウ。
とか言いつつ、まんざらでもない俺……。
ちっくしょ……いつの間にこんなに乙女になっちまったんだ、俺は?
「あ」
急にルキーノが耳元で呟いてびくりとした。
「そうだ、ジャン!今日は特別だ!俺に入れていいぜ!」
「はああああ!!?」
ルキーノの突拍子のない提案に腹の底から異議を唱える。
「アホか!冗談じゃねえよ!」
「はっはっは!なんだ、ジャン!遠慮すんなよ!」
「してねえよ!!」
何が悲しくてこんな色気のないマッチョを抱かなきゃいけないんだ!
どんだけ酔ってるんだ、このバカライオンは!?
「安心しろよう。コッチでも天国にイかせてやるからよう」
「なっ……」
そう言うと、本気で嫌がる俺の襟首をむんずとつかみ引きずるように歩き出す。
「うわ、ちょ、おい!止めろバカ!止めろって!うわ、うわあーーーっっ」
俺の抵抗など蚊が刺したほどにしか感じないのか、ルキーノは大股でホテルへと歩みを進める。
デイバンの静かな冬空に俺の悲痛な叫び声が響き渡った。
誰か!
誰かこのアホ止めてくれ!!
end