ホテルの交換所はソリドが売り切れていた。
「え…ないんですか?」
「ない」
「…………」
無愛想なおやじの態度に腹を立てながらも、ない物は仕方がないと2人のところに戻る。
「ソリド…売り切れだった」
「え~。なんだよ~。ないの~?」
リンが責めるような口調で不満を漏らす。
「ごめん…」
申し訳ない気持ちで謝った。
「お前が謝ることないだろ」
「アキラ」
「これだけの人数がいるんだ。こういう時もあるんじゃないのか」
「アキラ!」
「!?やめろっ!俺の顔で抱きつくな!」
「じゃあ戻ったら抱きついてもいいの?」
「そういう話をしてるんじゃない!」
無理やり引き剥がされてしまった。
「よ~う。相変わらずじゃれ合ってるな~」
タバコをくわえて片手をタルそうに振りながら源泉さんがやって来た。
「おっさーん、もぉ~聞いてよ~」
リンが大げさなポーズをとりながら、あからさまなため息をつく。
おしゃべり上手なリンのおかげで、源泉さんへの説明が簡潔にできた。
「ほぉ~ん…てことは、お前さんがケイスケでこっちがアキラか。はっはっはっ」
「笑い事じゃない。元に戻る方法とか知らないのか?」
「うーん。俺も長いことここにいるが、こんな事は初めてだからな。ま、調べてはみるけどな」
源泉さんでも知らないのか。
本当に戻れるのか不安になってきたな。
「ま、別にこのままでもいいんじゃないか?性別も年齢も変わらないんだし」
「えっ!?」
「嫌だ!!!!」
「ア、アキラΣ( ̄□ ̄;)」
力一杯拒絶された…。
「そりゃ、しょうがないっしょ?ケイスケ変態だもん」
「へっ!?」
「ねーっ、アキラ♪」
「……………あぁ……」
「アキラ…(涙)」
この光景を見ながら源泉さんは爆笑。
俺とアキラが違うだけでかなり笑えるらしい。
もう少しアキラっぽく振る舞った方がいいのかな…?
「とりあえずケイスケはさぁー、どっか別の場所でソリドと水を交換してきてよ」
「あ、うん」
「俺も行く」
「い、いいよ。アキラはここにいて?」
「ひとりじゃ危ないだろ」
「平気。裏道抜けてくし」
あまりアキラに頼りすぎると、余計に鬱陶しがられるし…。
ここはひとつ、男らしいところを見せてアキラの好感度を上げよう!
「ケイスケ…」
アキラが心配そうな顔を向けてくる。
「行ってくるね」
とは言ったものの、やっぱ怖い!!!
いくら外見はbl@sterチャンプでも中身は俺だからヤバい。
戦いを挑まれたら終わりだ。
早いとこ交換して戻ろう!
俺はダッシュした。
細い道を走っていると前方に人影が現れた。
「!」
ヤバっ。
どうしよう。
人影はまっすぐこっちに近づいてくる。
でも1人だ。
イグラのルールでは第三者が見ていないゲームは無効。
大丈夫そうだな。
一気に横を駆け抜けようとして、
腕を掴まれた。
「うわっ」
「貴様、この俺を無視する気か?」
「………?」
誰だろう、この人。
つづく