「アキラっ、ただいまっ!!!」
俺は家に帰るなりアキラのところへ直行した。
アキラはテレビを見ながらビックルを飲んでいた。
今日はなんてったってバレンタインだ!
午前中に仕事が入ったのは痛かったけど、俺の思いの丈をアキラにぶつけるんだ!
チョコレートは給料3ヶ月分!(うそ)
バレンタインフェアーが始まったと同時に買ったんだぜ!
「おう。お帰り。冷蔵庫に…」
「アキラこれ…っ!!!」
チョコレートをアキラに渡した。
「えへへ。今日バレンタインなんだよ。アキラ忘れてただろ?これは俺からの気持ちだよ!はい、愛してるよ」
ちゅっ
「………」
「あ、アキラもうお昼食べた?」
「いや、まだ」
「俺、何かつくるよ」
「あぁ」
エプロンをしながら台所へ。
昨日炊いたご飯がまだ残ってるから、炒飯でも作ろう。
「確か、カニかまがあったはず…」
カニかまがあればカニ炒飯(もどき)だ。
確かめるために冷蔵庫を開けた。
「…………?」
あれ。
何か入ってる。
冷蔵庫には直径15センチくらいの箱が入っていた。
今朝はこんな箱なかったはず。
「アキラの…?」
しかもその箱はきちんとギフト用に包装してあった。
リボンもきれいに巻いてある。
これって…間違いなくアレだよな?
だって今日はあの日だもん。
てことは、俺が仕事の間に誰か来たんだ…。
アキラにチョコレートあげたやつが…。
箱を持つ手が小刻みに震えた。
一体誰だ………?
アキラにチョコレートを渡したやつは…?
「それお前のだよ」
箱を持って放心してる俺の後ろからアキラの声がして我に返った。
「商店街のケーキ屋で買ってきた。何か“そーゆーの”がいっぱい売ってたから…」
“そーゆーの”?
「………」
包装紙を丁寧に開けると、中には小さなハート型のチョコレートケーキがちょこんと入っていた。
“そーゆーの”とはこういうことか。
「ビターだって」
「ありがとう…ぅぐ…」
「おい…泣くなよ…」
おわり