「アキラ、今日の夕飯は恵方巻でいいかな?」
今日は節分。
近所のスーパーでは恵方巻がずらりと並んでいた。
夕方だから2割値引きされている。
俺は2つ手に取ってカゴに入れる。
「“えほうまき”って何だ?」
「巻き寿司のことだよ。節分の日にに食べるんだよ」
「巻き寿司か…。俺、かんぴょう嫌い」
「そうなの?」
「お前にやるよ。だから玉子くれよ」
「………」
まるかぶりするお寿司なのに分解するつもりだな、アキラ。
恵方巻を2つ買って家に帰ると、巻かれた恵方巻を一旦伸ばして、具のかんぴょうと玉子を交換した。
再び巻き直す。
こういうことしたら、逆に縁起が悪いような気もするけど…。
「今年の恵方は東北東だよ」
「そっちを向いて食べるのか?」
「そうだよ」
「どっちだ?」
え…。
どっちだろう…。
「あっち…かな?」
「…………」
呆れた顔された。
「よし、食べよ食べよ」
取り繕うように玉子が二本入った恵方巻をアキラに渡した。
あむ。
口いっぱいに恵方巻を頬張るアキラ。
「けっこうボリュームあるな、コレ」
もぐもぐと一生懸命口を動かしているが、なかなか口の中が空にならない。
アキラが恵方巻を頬張る。
アキラが口いっぱいに。
恵方巻を……。
「エロい…」
「は……?」
「アキラッ…俺の恵方巻ッ…」
「何でジッパーを下ろすんだッッッ」
ドガァッ
「ぅぶっ」
「露骨な下ネタは好きじゃない」
「ご、ごめ……」
滝のように流れ出る鼻血を抑えながら残りの恵方巻を食べた。