どうしよう。
クリスマスまで一週間だ。
アキラの欲しいものが全然わからない…。
街をぶらついて探そうにも、仕事が終わる時間には店はほとんど閉まってる…。
焦るばかりだ。
そして今日も、結局0時近い。
アキラ、もう寝てるよな。
音をたてないように、そっと玄関の扉を開ける。
と、予想に反して部屋の中はまだ明るかった。
「た、ただいま」
「今日も遅いんだな」
「起きてたんだ。寝ててよかったのに…」
「いや、大丈夫だ。まだ眠くないから」
嘘ばっかり…。
明日も朝早いクセに。
アキラは俺の帰りを待ってたんだ。申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「あまり無理するなよ」
アキラが心配そうな顔をしてる。
ああ、早くアキラの笑顔が見たい。
……あんまり見たことないけど……。
そうだ、俺の帰りを気にせずに、ゆっくり休める家に引っ越すっていうのどうだろう。
クリスマスプレゼントは新居とか!?
めちゃくちゃ格好良くない!?
「アキラ!この家ってさ、ほら、狭いよね?」
「……?そうだな」
「だったらさ…」
「でも俺は結構気に入ってる。ひとりで住んでた頃は、家なんかに思い入れも執着もなかったけど、この家は…違う」
アキラ…。
「この家はお前と過ごした時間や思い出がたくさん詰まってるだろ。どれも俺にとっては大切で失いたくないものだ。だから狭くてもいい。」
そんな風に思ってくれて……
「それに…お前と一緒に寝起きするだけなら、これくらいが丁度いいだろ?お前との距離も…」
「アキラァァァァ!!!」
頭からアキラに突っ込んでいく。
なしなし!!
引っ越しなし!!
「アキラアキラアキラアキラアキラァァァァ」
アキラの胸にグリグリと頬をこすりつける。
あああいい匂い。
「なっ!?ケイスケやめろ!」
俺はそのままアキラを押し倒した。
クリスマスまであと7日!!!
アキラをいただいた後に改めて考える!!
あわわわわ!!!
カ、カウントダウンボイス聞きなよ…!!!
Nitro+chiral公式サイト
絶対聞きなよ!
哲雄…やばいくらい低い声だぜ!
かっこいいぜ!!
明日届くよ~。
早くやりたい!
アキラとこたつに入ってのんびりテレビを見るのが俺の幸せの時間だ。
「近頃は…ゲーム機にカメラ機能が付いてるんだな」
「すごいよなー。インターネットにつないだりして遊べるんだもんね!」
「そんなこともできるのか」
CMを見ながら何気ない会話。
ひょっとしたら、アキラは興味があるのかな?
クリスマスプレゼントはコレで決まりか!?
「欲しい?ゲーム機」
「…いらない」
「でも写真が撮れるよ」
「大体、ゲーム機にそんなの必要ないだろ。携帯のカメラですら使わないのに」
「俺は使うよ、カメラ」
「……………」
アキラに睨まれた。しまった…やぶへびだったか。
俺は話を変えようと、テレビの話題を持ち出すが、すでに遅い。
「見せろよ」
「何を!?」
「写真」
「何で!?」
「いいから見せろ!」
「わぁっ」
アキラが俺の携帯を取り上げようと身を乗り出してきた。
まずい!
アキラのあんな写真やこんな写真がっっ!!
携帯を見られたらアキラ怒にられる!!
てゆーかもう怒ってるけど!!
俺は携帯を取られまいと必死にアキラから逃れる。
攻防は約5分ほど続いた。
「はぁっ、はぁっ、アキラ、もう、諦めな、よっ」
「ぅるさいっ、はっ、おまっ、お前っ、こそ、いい加減に渡せっ…!」
だめだ!
アキラは絶対に諦めない!
けど俺だってこのマル秘画像をみすみすと渡せるわけがない!
しかもここだけの話、動画もあるんだぜ…!!
だけどこのままじゃ埒が明かない。
どうする……?
と、
そんな俺の一瞬の隙にアキラが反応した。
「取ったぁ!」
「あああぁあぁぁっ!!!!」
アキラは勝ち誇った顔で俺の携帯を取り上げると、中身を確認する。
「だめっ…」
慌てて奪い返そうとしても、アキラはすばしっこい。
狭い部屋の中をひらりひらりと受け流しながら移動していく。
「何だコレ!削除!削除削除削除削除削除!」
ひいぃ~。
デスノの魅上みたいになってるーーーっ!
「やめっ…」
「うぁっ」
ガタンッ
俺がこたつにつまずいてアキラもろとも倒れ込む。
結果、アキラを後ろから組み敷く形になった。
「つ…」
「ごめんっ」
「…気を付けろよ」
アキラが携帯をこっちに放ってきた。
もちろん、全てが削除済み(涙)
「あぁ……う…ぐす…」
ショックのあまり泣き崩れた。
「泣くなよ…」
「えっく…アキラの…ぐす…しゃしん…」
「泣くなって」
「うくっ…ひっ…」
「ケ、ケイスケ…?」
俺があまりにも情けない声を上げて泣くからアキラが心配した顔を向ける。
「鼻水出てるぞ」
「うー…えぐ…ひくっ」
「…………ケイスケ…」
俺がいままでどれほど苦労して盗撮してきたか、アキラにはわからないだろう。
ありとあらゆる手段をつかって撮ったコレクションたち…。
アキラの寝顔、笑顔、照れた顔、落ち込んだ顔…。
風呂上り、恥じらった顔、キスするときの顔、我慢してる時の顔やイッちゃった時の顔まで…!!!
動画も…。
しばらく立ち直れない。
マイクロSDにコピーしとけばよかった!
「おい」
畳に突っ伏す俺にアキラが声をかける。
だけど俺は顔を上げなかった。
「こっち向けよ」
「うう…」
無理やり顔を上げさせられた。
涙でぐしゃぐしゃの俺の顔の前に、アキラが真顔でピースしてきた。
「ほら」
ほらって…。
「撮れよ」
「…………」
「早く撮れよ」
「う、うん…」
携帯のカメラを起動させ、アキラに向ける。
しゃらら~ん
「…………」
「…………」
「これでいいな」
「う、うん…」
アキラのピースは国宝級に貴重だけど、なんか…無理やり写真を撮らされた感が拭えない…。
俺はクリスマスにアキラのエッチな写真が欲しい……!!
クリスマスまであと9日!!!